テレマークスキーはバックカントリーで有利なのか?その2

前回の記事では、こと滑りに関しては有利ではないことを書きました。
では、歩くスキーと言われることもあるテレマークスキーですから、登りの部分に関してはどうでしょう。

結論をいうと、特に有利ということは全くありません。
歩くスキーとして活躍するテレマークは、細板と革靴の組み合わせです。
板やブーツも軽く、ブーツと板の接点は柔らかくて抵抗も無く、ブラブラとしてます。
歩くことに対して、全く抵抗はありません。

しかし、バックカントリーで使用されるプラスティックブーツとハードワイヤーのビンディングは非常に固く、歩く際の抵抗が大きいです。
歩こうとしてかかとを高く上げる為にはその抵抗に対してより多くの筋力を使うことになります。

それでも、ゲレンデ仕様のブーツと板で登るよりは随分と楽です。
ゲレンデ仕様=カカトが上がらない、通常のスキースタイルのことを、バックカントリーでは「アルペンスキー」という言い方をしています。
バックカントリーをやらない人にアルペンスキーと言っても『?』という顔をされてしまいます。

アルペンスキー、つまり直訳すれば山スキーです。
山スキーとは、素直に言葉の意味だけで考えればゲレンデではない山岳地帯をスキーで滑走すること。
なので、テレマークだろうが普通のスキーだろうが山に持っていって滑れば山スキーですね。

そういった意味合いとは別に、バックカントリー用具的に「山スキー」と言われるセットがあります。
板の裏にシールスキンを張って雪山に登り、滑って帰ってくる為の道具です。

山スキーブーツは兼用靴などとも言われ、滑りにも歩きにも対応しています。
歩行モードと滑走モードの切り替えがあるわけですね。
スノーボード用の柔らかいブーツと違い、スキー用のハードなプラスティックブーツではアスファルトの駐車場ですらゴツゴツと歩きづらいです。
そんなものを履いて雪山を登っていくのは結構つらいんですが、歩行モードがあると足の動きの制限が少し和らいで楽になります。

テレマークブーツにも歩行モードと滑走モードの切り替えがあるので、この点では山スキー用ブーツと特に変わりません。

問題はビンディングの方ですね。
上の方で書いたように、滑走をメインで考えたテレマークスキー用のビンディングは抵抗が高くて歩きづらいです。
では、山スキービンディングはというと・・・・
これまた滑走モードと歩行用モードの切り替えがついています。
滑走モードとは、普通に滑る時のモードなので特にどんなものかは説明も要らないと思います。
山スキービンディングの歩行モードとは、ビンディングのヒール側のパーツの固定を外して、つま先側のパーツだけが板と接している状態です。
もちろん可動します。
クロスカントリースキーのように、カカトが自由に上がるのでスイスイと歩くことができます。
カカトを上げようとする動きに対して、抵抗となる要素は設けられていません。
まさにヒールフリーです。
可動範囲も大きいので、テレマークスキーに比べて同じ労力でも速く長いストロークで歩くことができます。

山スキーセットは、登りの時には抵抗も少なく歩幅も大きく楽に登れて、下りの時にはカカトを固定させて普通のスキースタイルで滑れるという、ある意味最強のバックカントリースキー用具です。

滑りに関しては、ブーツもビンディングもゲレンデ用のスキーセットに比べれば剛性が不足するため、道具に頼れる度合いは低くなります。
しかし、登りに関しては非常に楽です。
トータルで考えればやはり最強と言えるでしょう。

「山を滑る道具」というイメージを持っている人も多いテレマークスキーが霞んでしまいます。
テレマークが優れているポイントは「苦労するのが面白い」という、いささかM的な要素だけなのでしょうか?
一応、バックカントリーのフィールドに置いて山スキーセットよりも優れている部分も存在します。

次回に続きます。
(あまり利点というほどの利点でもないので、期待しないでください・・・。)